新型コロナウイルスに関する法律問題Q&A

中小企業向けに新型コロナウイルスに関する法律問題等について、Q&A形式でまとめましたので、公開していきます。
※本Q&Aでの回答情報は各種情報をもとに当事務所の判断において掲載しているものであり、個別の状況によって回答とは異なる場合もあることにご留意ください。

Q.緊急事態宣言とはどのようなものですか?

A.緊急事態宣言とは、新型インフルエンザ等対策特別措置法 32 条(以下、「特措法」といいます。)に基づいて、新型インフルエンザ等(新型コロナウイルスもここに含まれます。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある事態が発生したと認めるときに宣言することができるとされています。

  • 緊急事態宣言によって実施可能となる措置
     緊急事態宣言が発令されると、都道府県知事が一定の措置をとることができるようになります。特に重要と思われるものを抜粋します。
    ① 住民に対する外出自粛要請(特措法45条1項)
    ② 多数の者が利用する施設(ex.学校、社会福祉施設、興行場等)の使用制限等の要請・指示(特措法45条2項、3項)
    ③ 住民に対する予防接種の実施(特措法46条)
     臨時医療施設の開設のための土地の強制使用(特措法49条)
    ⑤ 運送業者等に対する緊急物資運送の要請・指示(特措法54条)
     医薬品や食品、衛生用品等政令で定める物資の所有者に対する売り渡しの要請・強制収容(特措法55条) 

  • 【措置に強制力はあるのか?
     上記の措置のうち、強制力がある(違反した場合の罰金が予定されている) のは、④と⑥のみです。そのため、①外出自粛要請や②施設の使用制限等の要請・指示に違反したからといって、罰則があるわけではありません。この点は、ヨーロッパ等の諸外国との違いとなります。現状の日本の法律では、海外のように罰則を伴う外出制限をすることはできず、また、特措法には「ロックダウン」を意識した条項は規定されていませんので、諸外国のような「ロックダウン」は行うことはできません。

  • 補償はどのようになっているのか?
     特措法が予定している補償としては、上記の④、⑥や医療機関に対する要請についての実費の弁償等のみであり(特措法62条、63条)、①外出自粛要請や②施設の使用制限による補償は予定されていません。
     そのため、東京都や大阪府が行っている休業要請支援金は、特措法に基づくものではなく、各自治体独自の支援金ということになります。

  • 【岡山県での措置はどのようなものか?】(令和25月15日以降)

     政府は、令和2年5月14日、同月15日以降、緊急事態措置を実施すべき区域の対象から岡山県を外しました。ただし、緊急事態宣言を実施すべき区域でなくとも、感染拡大防止の取組みは継続するよう新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針で要請しています。

     ※新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和2年5月14日変更)

      岡山県では、令和2年5月15日~同月31日までの感染症対策にかかる協力の要請として、①外出に際しての協力要請(特に県境を越えた移動は極力控えるよう要請)、②イベントの開催自粛要請(ただし、比較的少人数で行うものについては、感染防止策を講じた上で 開催可能とする。)③適切な感染防止策の協力要請が公開されました。

Q.緊急事態宣言が出されても、従業員を出社させてもよいでしょうか?
 また、従業員を出社させる場合の注意点を教えてください。

A.従業員を出社させることは問題ありません。
 ただし、企業は従業員に対して安全配慮義務(労働契約法5条)を負っていますので、就業に際しての感染リスクを下げるための対応(ex.時差出勤、テレワークの検討、就業の際に「三密」を避けるための方策、マスクの着用・消毒の徹底等)をとる必要があります。

  • 【緊急事態宣言と従業員の出社の関係】
     上記のQAで記載したとおり、緊急事態宣言下において都道府県知事からなされる要請は、自発的な対応を促すものですので、要請があったとしても、従業員を出社させることは可能です。

  • 【安全配慮義務との関係】
    しかしながら、出社をさせることが可能であるといっても、企業は従業員に対する安全配慮義務(労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をする義務)を負っていることを忘れてはなりません。
     安全配慮義務の具体的な内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるとされており(最小判昭和59410日)、個々の業種、企業ごとに考えなければなりません。
     今回の新型コロナウイルスへの対応の場面では、新型コロナウイルスの特性(①潜伏期間が114日であること、②飛沫感染、接触感染以外にも閉鎖空間において近距離で多くの人と会話をする等の一定の環境下であれば咳やくしゃみ等の症状がなくても、感染を拡大するリスクがあること、③り患しても一定数は無症状であり、その無症状のり患者から感染が拡大する事例が報告されていること、④その他未だ不明な点が多々存在すること)を踏まえ、感染リスクを下げるための適切な対応が必要となります。例えば、電車通勤による感染リスクを下げるために時差出勤を認めること、出勤・出社に伴なう感染リスクを下げるためにテレワークを導入すること、就業させる際にはマスクを着用させる、手指等の消毒を徹底させるといった対応を検討する必要があります。

  • 【岡山県から示された対応策】
  • 岡山県でも、県から「すべての施設に求める感染防止策」として、以下の対策が挙げられています。※岡山県における新型コロナウイルス感染症対策に係る協力の要請から抜粋
    〈基本的な対策〉
     ・入場者の整理(入場前の間隔(できるだけ2mを目安に)確保)
    ・入場者へのマスク着用の周知及び従業員のマスク着用
    ・有症状者の入場禁止
     ・手指消毒設備の設置
    ・施設の消毒(共用部分(エレベータのボタン、手すりなど)の定期的 (概ね1時間ごと)な消毒)
     ・施設内の換気(概ね30分ごと窓の開閉など)

    〈「3つの密」を回避するため特に必要な対策〉
    ・利用者の間隔(できるだけ2mを目安に)の確保又は従事者と利用者の間 や利用者間へのパーティションの設置
     ・混雑時の入場制限
    ・施設内で大きな声を出すことの禁止
     ・施設内で激しい運動の禁止
    ・飲食を主目的としない施設内での利用者の飲食禁止
    ・飲食を主目的とする施設での家族以外の多人数での会食禁止

     上記でも記載したとおり、個々の業種、企業ごとに考えなければなりませんので、岡山県から示された対応のみにとらわれず、自社の業務における感染リスクを取り出した上で、検討することが必要です。
     以上のような対応をとることは、従業員に対する安全配慮義務の観点だけではなく、後のQAでも登場する休業の際の「不可抗力」の検討においても必要となります。
     なお、弊所(業種に分類すればサービス業)では、緊急事態宣言下においては、①従業員の通勤時の感染リスクを下げるために時差出勤や一部の従業員にはテレワークを導入し、②事務所外の方との接触からの感染リスクを下げるために、相談・面談は、原則WEB・電話等、接触を伴わない方法とし、例外的に面談の必要が生じた場合には、マスクを着用した上で、アクリル板越しでの面談を実施しています。さらに、上記以外に、③出勤時の朝には体温計で体温を測ることや、④定期的に事務所内を換気する等の対応をとることとしました。

Q.新型コロナウイルス感染症に関する法律問題について、参考になる資料はありませんか?

A.企業向けのQAとしてまとまっているものとして、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」があります。上記のQAは、主に労務関係で不明な点が出た際に参照いただくことを想定して記載されています。
 また、厚生労働省のホームページ以外にも、東京弁護士会の中小企業法律支援センターに掲載された「新型コロナウイルス対策に関する各種Q&A」も参考になります。このホームページは、労務面でのQA以外にも、資金繰り対応、下請取引関係、契約・取引関係についても、詳細に記載されておりますので、参考にしていただけるかと思います。
 上記に掲載した各ホームページの記載だけではよく分からない、ホームページに掲載されていない点の心配があるといった場合には、気兼ねなく、弊所までご相談ください。なお、弊所では、当面の間、新型コロナウイルスに関連する法律相談については、無料で対応させていただくことを予定しております。

Q.緊急事態宣言が出されたことなどを受け、会社を休業としようと思います。これに伴い従業員も休業させよう思うのですが、どのようなことに気をつければよいでしょうか?

A.従業員に対する休業手当(平均賃金の100分の60)の支払いを検討する必要があります。
 なお、休業手当の支払いは、休業が「不可抗力」である場合には不要とされていますが、仮に休業手当の支給が法的に不要とされる場合であっても、雇用調整助成金等を活用し、従業員への手当を支給するなど、できる限り従業員の生活を保障するよう御検討いただきたいと思います。
※本Q&Aについては、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」4-14-5~問8も併せてご確認下さい。

  • 【休業手当の支給】
     労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。逆にいえば、使用者の責めに帰すべき事由ではない=「不可抗力」による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。 

  • 【「不可抗力」による休業とは?】

     ここでいう「不可抗力」とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
     このうち、①については、緊急事態宣言により満たすとされていますが、問題は②の要件です。厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」でも、この点について、休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力として、「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討する」ことがその具体例として挙げられています。
     したがって、業務の性質上、テレワーク等の導入により休業を回避できる場合には、②の要件を満たさないため、「不可抗力」とは言えないと考えられます。

  • 【「不可抗力」による休業にあたるか否かの検討】

     不可抗力にあたるか否かは個別具体的な事情により変わるものですが、以下でいくつかの具体例で検討してみたいと思います。
    ・営業する店舗が入っている施設が新型コロナウイルスの影響で閉めることになった場合
     店舗が入っている施設が閉鎖された以上、店舗を営業することができず、これは事業者が通常の最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない状況と言えます。ただし、この場合でも、店舗で勤務する従業員を他の店舗で勤務させる、あるいは、本部での総務・事務等として配置転換できる場合には、休業させることは「不可抗力」とは言えないものと考えられます。
    ・大口取引先の取引中止
     大口の取引先の一つが新型コロナウイルス感染リスクを考慮して事業を休止したことにより、自社も事業を休止した場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力(自宅勤務によって代替できるか)等を総合的に勘案し、判断する必要があり、一律の判断はできません。
    ・セキュリティ上の問題で自宅勤務をさせることができない場合
     セキュリティ上の問題で自宅勤務をさせることができないというのは、企業側の問題と考えられる可能性(「不可抗力」と言えない可能性)があります。

  • 【では、どうすればよいか?】

     以上で検討したとおり、間違いなく「不可抗力」による休業であると断言できる状況というのはかなり限定的な状況ということはお分かりいただけるかと思います。
     また、仮に「不可抗力」による休業であると判断できる場合であっても、休業手当を支給しないという判断は、従業員のモチベーションに悪影響を与えることになり、場合によっては、休業後の人員が確保できない可能性も考えられます。
     したがって、実務上は、「不可抗力」による休業に該当するか否かという点は一旦置き、従業員に対してできる限りの休業補償(可能ならば休業手当を超える補償)をご検討いただくことがよいと考えます。
     以上に加え、雇用調整助成金等の助成金を受けるためには、休業手当以上の額を出すことが要件となっておりますので、その観点からも、できる限りの休業補償の検討が必要となります。 

Q.5月14日の政府、岡山県の発表を受けて、業務を再開しようと思うのですが、注意すべき点はありますか?

A.業務を再開する場合には、岡山県における新型コロナ感染症対策に係る協力の要請の内容、具体的には、①外出に際しての協力要請(特に県境を越えた移動は極力控えるよう要請)、②イベントの開催自粛要請(ただし、比較的少人数で行うものについては、感染防止策を講じた上で 開催可能とする。)③適切な感染防止策の協力要請を踏まえた対応を講じて下さい。なお、この対応は5月4日時点の発表内容であり、それ以降に新たな情報があれば、その情報を踏まえて、別途の対応が必要となりますので、常に情報収集が必要です。

  • 【5月14日の政府、岡山県の発表
     政府は、令和25月14日、同月15日以降、緊急事態措置を実施すべき区域の対象から岡山県を外しました。ただし、緊急事態宣言を実施すべき区域でなくとも、感染拡大防止の取組みは継続するよう新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針で要請しています。
     ※新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和2年5月14日変更)

      岡山県では、令和25月15日~同月31日までの感染症対策にかかる協力の要請として、①外出に際しての協力要請(特に県境を越えた移動は極力控えるよう要請)、②イベントの開催自粛要請(ただし、比較的少人数で行うものについては、感染防止策を講じた上で 開催可能とする。)③適切な感染防止策の協力要請が公開されました。

    岡山県における新型コロナウイルス感染対策に係る協力の要請(令和2年5月15日) 

  • 【①外出に際しての協力要請
     
    外出に際しての協力要請は以下のとおりです(企業向けに一部内容改変)。
    ・県境を越えた出張・営業などはできる限り控える。
    ・会議などを行う場合には、三密(密閉・密集・密接)に該当しないように注意を行う。
    ・三密に該当する場には行かないようにする。
    ・専門家会議で示された新しい生活様式を取り入れた業務を検討する。
     ※この点については、後記QAQ 専門家会議で示された「新しい生活様式」を踏まえた業務はどのようなものでしょうか?」もご参照下さい。

  • 【②イベントの開催自粛要請
     イベントの開催自粛要請の内容は以下のとおりです。
     ・三密に該当するイベントは基本的に自粛する。
     ・比較的少人数で行われるイベントについては、感染防止対策を講じた上であれば、開催可能。

  • 【③適切な感染防止策の協力要請】

    協力要請を受けている適切な感染防止策は以下のとおりです。
    〇 すべての施設に求める感染防止策
    (基本的な対策)
    ・入場者の整理(入場前の間隔(できるだけ2mを目安に)確保)
    ・入場者へのマスク着用の周知及び従業員のマスク着用
     ※この点については、後記QA「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、従業員全員にマスクの着用を義務付けようと思うのですが、可能でしょうか?」もご参照下さい。
    ・有症状者の入場禁止
    ・手指消毒設備の設置
    ・施設の消毒(共用部分(エレベータのボタン、手すりなど)の定期的 (概ね1時間ごと)な消毒)
    ・施設内の換気(概ね30分ごと窓の開閉など)

    (「3つの密」を回避するため特に必要な対策)
    ・利用者の間隔(できるだけ2mを目安に)の確保又は従事者と利用者の間 や利用者間へのパーティションの設置
    ・混雑時の入場制限
     ・施設内で大きな声を出すことの禁止 ・施設内で激しい運動の禁止
     ・飲食を主目的としない施設内での利用者の飲食禁止
     ・飲食を主目的とする施設での家族以外の多人数での会食禁止

    〇 上記「すべての施設に求める感染防止策」に加え、高齢者福祉施設に求める感染防止策
    ・利用者の健康管理(有症状者の利用の制限など)
    ・従事者の健康管理(有症状者の自宅待機など)
     ・飲食時や休憩室などでの他の従事者との一定間隔の確保
     ・複数の従事者が共有するものの定期的な消毒
     ・緊急の場合を除く面会の禁止
     ・ケアやリハビリテーション等における「3つの密」を避ける取組
    ・不要不急の外出や県境を越えた移動を控えるよう従事者に周知徹底
     ・県外からの訪問者との接触を避けるよう、利用者や従事者に周知徹底
    ・通所又は短期入所サービスについては、家庭等での対応や代替サービスが可能な範囲で、利用回数の縮小などの検討を利用者や家族に確認

     以上に記載したもののほか、
    ・厚労省から職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト
    ・各省庁から公表された業種別の感染拡大予防ガイドライン

     が公表されていますので、自社の感染予防対策の参考になさってください。

Q.専門家会議で示された「新しい生活様式」を踏まえた業務とはどのようなものでしょうか?

A.「新しい生活様式」とはテレワークやローテーション勤務、時差出勤、オンラインでの会議、オンラインでの名刺交換、対面での打合せは換気とマスクを着用するといったものです。全てを導入することが難しい業務もあると思いますので、必ずしも上記のみにとらわれず、それぞれの業種でできる限りの感染対策を行っていただくことが重要です。

  • 【テレワーク、時差出勤
     テレワークや時差出勤の場合の具体的な対応については、別のQ&Aを用意していますので、そちらをご覧ください。

  • 【オンライン会議

     オンラインでの会議を可能とする様々なソフトウア(ZoomteamsSkypeなど)がありますので、各企業の業態に合わせたソフトウェアをご利用ください。
     これまで対面式の会議が中心であった企業からすれば、いきなりオンラインでの会議を導入することに抵抗があるかもしれませんが、対面での会議でクラスターが発生してしまった場合には、従業員の健康面の問題のみならず、企業のレピュテーションの問題も発生します。
     今後のポストコロナを見据えた場合、オンラインでの会議は必須と考えられますので、導入について積極的にご検討いただければと思います。
     なお、弊所でも、緊急事態宣言を受け、弊所内・外での打合せ・会議を原則、電話・WEBでの打合せに切り替えましたが、思っていた以上にWEBでの打合せ・会議の使いにくさはありませんでした。

Q.従業員に新型コロナウイルスに感染した者が出てしまいました。どのように対応すればよいでしょうか?

A.感染が確認された従業員は休業させることはもちろんのこと、感染拡大防止の観点から、濃厚接触者の有無、社内消毒などの対応が必要になります。

  • 【感染が判明した従業員への対応
     新型コロナウイルスに感染した従業員は、都道府県知事の入院勧告を受けたり、一定期間の就業制限を受けることがあります。このような場合に該当せずとも、感染拡大防止の観点から、当該従業員は休業させるべきです。
     そして、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」4-問2によれば、新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はないとされていますので、この場合、休業手当を支払う必要はありません。
     なお、従業員が被用者保険に加入しており、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます(具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。)。 

  • 【感染拡大防止のための措置
     
    社内で新型コロナウイルスに感染した従業員が出た場合の具体的な対応について、個々の企業が自社に併せた形で策定いただく必要があります。
    既に策定されている企業の方も多いと思いますが、まだ策定されていない企業の方向けに参考になるものとして京都府が策定した「府内事業所の従業員に新型コロナウイルス感染者・濃厚接触者が発生した際の対応及び事業継続に関するマニュアル(雛形)」を一部抜粋・加筆してご紹介いたします。

    1 患者発生時の患者、濃厚接触者への対応
     (1) 感染者発生の把握、報告及び周知
        感染者が確認された場合には、事業所の所在地を所管する保健所に報告し、対応について指導を受ける。また、従業員に対しては事業所内で感染者が確認されたことを周知するとともに、感染予防策を改めて周知徹底する。
     ※この場合の周知については個人情報に対する配慮が必要です(詳細は後記QA「従業員が新型コロナウイルスに感染症に感染した場合、従業員の同居家族が感染した場合などに報告を求めることは可能でしょうか?」も参照下さい。)
     (2)  濃厚接触者の確定及び対応
      ア  保健所の調査に協力し、感染拡大防止のため、速やかに濃厚接触者と見込まれる者を自宅に待機させる。
     イ 保健所が濃厚接触者と確定した従業員に対し、必要に応じ PCR 検査(行政検査)の受検あるいは感染者との最終接触から 14 日間の健康観察を行う必要があることから、保健所の指示に従う。
    ウ 濃厚接触者と確定された従業員に対し、発熱又は呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈した場合には、保健所に連絡して PCR 検査(行政検査)を受検するよう促し、速やかにその 結果を報告させる。

    2 施設設備等の消毒
     (1) 保健所が必要と判断した場合には、感染者が勤務した区域(執務室、製造加工施設、倉庫、売場等)の消毒を行う。
    (2) 消毒は保健所の指示に従って実施することが望ましいが、緊急を要する場合には、感染者が 勤務した区域のうち、手指が頻回に接触する箇所(ドアノブ、スイッチ類、手すり等)を中心 に、アルコール(消毒用エタノール(70%))又は次亜塩素酸ナトリウム(0.05%以上)で拭き取り等を行う。
     食品等取扱い事業者については、製造、流通、調理、販売等の各段階で、食品取扱者の体調管 理やこまめな手洗い等の一般的な衛生管理が実施されていれば、感染者が発生した施設等は、 操業停止や食品廃棄などの対応をとる必要はありません。

    3 業務の継続
    (1)  重要業務の継続
    ア  感染者及び濃厚接触者の出勤停止の措置を講じることにより、通常の業務の継続が困難な 場合には、重要業務として優先的に継続させる製品・商品及びサービスや関連する業務を選定し、重要業務を継続するために必要となる人員、物的資源(マスク、手袋、消毒液等)等を把握する。
    イ  重要業務継続のため、在宅勤務体制・情報共有体制・人員融通体制を整備するとともに、 重要業務継続のための業務マニュアルを作成する。
    (2) その他必要なことは別途定める。

Q.従業員に、咳や発熱など新型コロナウイルス感染の疑いがある場合には、どのように対応したらよいでしょうか?

A.感染拡大防止の観点から、当該従業員は出社させず、自宅療養させることとしてください。その上で、症状が改善しなければ(特に4日以上、風邪の症状や37.5℃以上の発熱が続く場合)、帰国者・接触者相談センター(岡山の場合には、以下のリンク先から連絡先を調べることができます)に連絡するよう指示してください。

  ※新型コロナウイルス感染症に係る帰国者・接触者相談センター

  • 【従業員の自宅療養
     まず、従業員が、会社の病気休職の制度を利用したいと希望したり、有給休暇を利用したいと希望してきた場合には、その利用を認めるという対応で構いません。
     他方で、従業員に新型コロナウイルス感染の疑いがあるにも関わらず、従業員が出勤を希望した場合に、当該従業員に自宅待機命令を出すことができるかという点が問題となります。
     この場合、当該従業員の症状は、実際は単なる風邪かもしれませんが、症状が軽い場合であっても、「帰国者・接触者相談センター」への相談をする基準には「発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合」とあり、症状が軽い状態でも、新型コロナウイルス感染症にり患している可能性は否定できません。また、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」では、従業員に発熱などの風邪症状がある場合には、仕事を休ませ、外出を自粛するよう呼びかけられています。以上に加え、現在、新型コロナウイルス感染症の治療薬は開発されておらず、ひとたび、社内での新型コロナウイルス感染症が蔓延した場合には、事業の一時的な停止を余儀なくされる可能性もあることを踏まえると、感染拡大防止のための措置として、自宅待機命令を行うことは可能と考えます。
     また、自宅待機を命じることについて、場当たり的な対応とならないよう、具体的な自宅療養の基準(例えば、体温が37.5℃を超えている場合には自宅療養とする等)を検討しておくことも必要です。

  • 【賃金の支払いはどうなるのか?
     
    1 有給の病気休職制度がある場合、従業員が有給休暇の利用を希望した場合
     まず、会社に有給の病気休職制度がある場合や、従業員が有給休暇の取得を希望した場合には、それぞれの休職・休暇について定められた賃金を支払うという対応で構いません。

    2 会社が自宅待機を命じた場合(従業員は出勤を希望している)
     問題は、従業員は出勤を希望している場合にもかかわらず、会社が自宅待機を命じた場合の賃金の対応です。
    ⑴「帰国者・接触者相談センター」での相談結果が判明している段階 
     この点につき、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」によれば「帰国者・接触者相談センター」での相談結果を踏まえても、職務の継続が可能であると判断される場合に、当該従業員を休職させる場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するため、休業手当の支払いをする必要が発生するとされています。
     他方で、従業員が新型コロナウイルス感染症にり患していることが判明した場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当しないため、休業手当の支払いをする必要はありません。この場合、被用者保険に加入されている従業員の方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

    ⑵ 「帰国者・接触者相談センター」での相談結果が判明していない場合
     問題は、「帰国者・接触者相談センター」での相談結果が判明していない場合です。
     この場合の対応については、業種・企業ごと、更には当該従業員の体調によっても判断が異なるものであり、一律に決められるものではありません。
     ただ、当事務所としては、この場合でも、休業手当を支給した上で、従業員の方に休業していただくことをお勧めします。この場合に、単純な欠勤として無給の取扱いとしてしまうと、従業員の方は無理をしてでも、出勤を試みようとする可能性がありますし、また、体調不良であるにもかかわらず、会社に体調不良の報告をしないということになりかねません。このような対応により、社内で感染が拡大した結果、一時的に事業所を閉鎖することになってしまう可能性もあります。したがって、従業員の方が安心して休めるよう、休業手当を支払った上で、自宅療養を指示すべきと考えます。

  • 【特別休暇の導入
    上記⑵のような場合に備え、従業員が安心して休めるよう、有給の特別休暇制度を創設するということも検討いただければと思います(厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業方向け)」4-問11)。
     今回の新型コロナウイルス感染症対策として、新たに特別休暇を設けた場合には、就業規則に特別休暇を規定したことにより負担した費用の一部を時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)により助成してもらうことも可能です。
     ※特別休暇の導入について注意すべき点は後記QA「新型コロナウイルスの対応のため、特別の休暇を設けようと考えているのですが、どのような点に注意をしたらよいでしょうか?」も参照下さい。

Q.新型コロナウイルスの対応のため、特別休暇を導入しようと考えているのですが、どのような点に注意したらよいでしょうか?

A.利用要件や賃金補償に明確にした上で、制度設計をすることが重要です。

  • 【特別の休暇を設けることについて
     有給休暇とは別に特別の休暇を設けること自体は、労働者に不利益を与えるものではないので、会社の判断で行うことができ、就業規則の変更等は必要不可欠なものではありません。ただし、その際の賃金補償や利用要件を定めておかなければ、運用が不明確となり、従業員間に不公平感を与えることにもなりかねませんので、それらの制度設定を行うことが重要と考えます。その際には、それらの条件を従業員に周知することが必要となります。 

  • 【特別休暇取得の要件について
    ①利用条件について
     利用条件としては、発熱、倦怠感などの症状が生じている場合、会社の休業・営業縮小期間に限定する場合などが考えられます。この条件をどうするかについては、テレワークでの勤務が可能かどうか(可能であれば、休暇ではなくテレワーク勤務とする)なども考慮した上で、会社で妥当な範囲を判断することになります。

    ②利用期間について
     利用期間については、明確に定めておく必要があります。新型コロナウィルスの影響がいつまで続くのかは見通しが立ちませんが、制度導入時には、今年1年の時限的な措置であるとしておけばいいと思います(状況に応じて延長することは可能です)。

    ③利用日数について
     利用日数については、利用条件をどう定めるかによります。発熱、倦怠感などの症状がある場合に限定するときは14日としたり、会社の休業期間に限定する場合には当該休業期間とすることが望ましいでしょう。

    ④賃金補償について
     特別休暇を取得した場合の賃金補償は、最低でも平均賃金の100分の60(休業手当の補償率)以上を支給することが必要となります。会社で雇用調整助成金の申請を行う場合には、その要件等を十分検討して、賃金補償率を定めるのが望ましいでしょう。

Q.従業員が新型コロナウイルスに感染した場合や従業員の同居家族が感染した場合に報告を求めることは可能でしょうか?

A.いずれの場合も、自己申告を求めることは可能と考えます。
 ただし、㋐申告をした従業員の個人情報の保護、㋑従業員の自宅待機命令をした場合の休業補償など、従業員が申告をしても問題がないと思えるような制度を検討する必要があります。

  • 【自己申告を求めることの可否
     企業は、従業員に対して安全配慮義務を負っており、その履行の観点から、職場での蔓延防止のため、必要かつ相当な措置をとることができると考えられます。
     新型コロナウイルスについては未だ未解明な点も多く、治療薬も開発されていないことから、職場での感染拡大予防の観点から、①従業員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合には、会社に対して報告を求めることは可能と考えます。
     また、②従業員の同居家族が感染した場合についても、従業員は濃厚接触者に該当し、感染リスクが高いといえますので、その旨を報告させる必要が高いと考えます。
     ただし、自己申告を求める場合には、以下のような配慮が必要です。 

  • 【自己申告を求める場合に配慮すべき事項
    1 ㋐個人情報の保護
     新型コロナウイルスに感染したことや同居家族が新型コロナウイルスに感染したこと等の情報は、当該従業員ないし同居家族の個人情報(その中での特に配慮が必要とされる要配慮個人情報)に該当します。
     したがって、従業員からの報告を受けたとしても、従業員の同意なく、みだりに第三者(取引先など)に公表すべきではありません。また、社内の他の従業員に対しても、原則として本人の同意を得た上で、開示すべきと考えます(従業員間の共有は個人情報保護法上の「第三者への提供」には該当しないと考えられていますが、トラブル防止の観点から本人の同意を取得するよう努めるべきです)。

    2 ㋑休業補償
    ⑴ 従業員が新型コロナウイルスに感染した場合
     前記Q&Aのとおり、従業員が新型コロナウイルス感染症にり患していることが判明した場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当しないため、休業手当の支払いをする必要はありません。この場合、被用者保険に加入されている従業員の方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

    ⑵ 従業員の同居家族が新型コロナウイルスに感染した場合
     この場合、従業員の体調に問題なければ、従業員の職務の継続が可能と考えられますので、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当の支払いをする必要があります。
     この点、自宅でも業務が可能な業種の場合には、従業員の体調を踏まえ、自宅での業務を行わせることは可能です。ただし、自宅での業務を行わせた場合には、通常と同様の賃金の支払いが必要です。

    また、いずれの場合でも、従業員の体調を把握するため、日々の体調を報告させるべきです。

Q.感染拡大を防ぐための勤務時間や勤務形態の柔軟化にはどのようなものがありますか?

A.感染拡大を防ぐため、時差出勤を認めたり、テレワーク等の勤務形態の柔軟化があります。それぞれの方法を導入する手続・留意点は以下のとおりです。           

  • 【時差出勤】
      就業規則に始業、終業時刻の繰り下げ繰り上げを定める規定がある場合、または、個別合意により、始業、終業の時刻を変更することができます。通勤による混雑具合に応じて、労使で十分な協議や試行をするなどして時差通勤を導入することが考えられます。なお、弊所も一部時差出勤を取り入れております。

  • 【テレワーク】
     テレワークと一口に言っても、在宅勤務、サテライトオフィス勤務など様々な種類がありますが、今回は代表的な在宅勤務を取り上げます。
    在宅勤務を取り入れる場合には、大きく①情報管理、②労働時間の管理、③在宅勤務を導入する際の費用の負担の検討が必要になります。
    ・①情報管理
     会社のPCを自宅に持ち帰って業務を行う、私物のPCからクラウド等を利用して業務を行う等様々な方法が考えられますが、いずれの方法を採用するにせよ、セキュリティ対策が必要になります。また、PCやUSBを社外に持ち出す場合には、紛失・盗難等のリスクがあるため、一定の対策が必要になります。
     テレワーク時の秘密情報の管理については、経済産業省知的財産政策室から「テレワーク時における秘密情報管理のポイント(Q&A解説)」も公表されておりますので、ぜひご参照下さい。
    ・②労働時間の管理
     在宅勤務の場合、従業員が出勤していないことから、労働時間の管理を検討しなければなりません。例えば、始業や在籍の確認については、Eメールでの始業報告をさせる、勤怠管理ツールを利用する等の対応が考えられます。
     在宅勤務を導入するにあたって意外に注意が必要なのが時間外、休日・深夜労働等の長時間労働の抑制です。在宅勤務での業務に不慣れなこと、いつでもPCにアクセスできる環境にあること等が相まって、在宅勤務では労働時間が長くなる傾向があるようです。長時間労働により、従業員の方の心身の健康を害してしまうことのないよう、所定労働時間外にPCへのアクセスを禁止する等、長時間労働を抑制する方法を労使で話し合う必要があります。
    ・③在宅勤務を導入するにあたっての費用負担
     在宅勤務を導入するにあたって、インターネット回線の利用料の負担や、自宅から郵便を送ったり、宅配を利用したりした場合の費用負担も検討が必要です。インターネット回線の利用料については、会社と個人の利用の切り分けが難しいことから、利用料の一部を会社が負担するという例が多いようです。また、郵便物や宅配の費用については、事前に従業員に必要となりそうな現金を渡しておく、やむを得ない出費が発生した場合には都度精算するという方法となると考えられます。
     なお、在宅勤務をするにあたり、従業員に郵便物の費用や情報通信機器等の費用を負担させる場合には、予め就業規則への規定が必要となります。

     以上で記載したようなテレワーク導入に際しての疑問点については、厚労省の「テレワーク導入のための労務管理Q&A」に詳細が記載されています。また、テレワーク導入に際して就業規則の変更する場合には、厚労省の「テレワークモデル就業規則」もご参照ください。
     なお、新たにテレワークを導入した中小企業事業主を支援するため、時間外労働等改善助成金(テレワークコース)も設けられています

     弊所では、テレワーク導入にあたっての就業規則の改定等のご相談も承っておりますので、気軽にご相談ください。

Q.テレワーク導入に併せて、就業規則を変更しようと思うのですが、どのような点に留意すべきでしょうか?

A.テレワーク導入に併せて、テレワーク勤務を命じることに関する規定、テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合には、その労働時間に関する規定、通信費などの負担に関する規定を設ける必要があります。
詳細は、厚労省の「テレワークモデル就業規則」もご参照ください。
 また、就業規則を定める以外にも、自社の状況に合わせて実際の運用にあたり検討すべき点の洗い出しも必要です。
 具体的には、①在宅勤務の利用はどのような運用とするのか(どの部署を対象とするのか、対象者を誰とするのか、利用をするための流れ)、②テレワークの際の勤務をどのようなものとするのか(業務開始・終了をどのように報告するのか、どのような業務を行うのか)、③機器の貸与等(PCや携帯電話の貸与、費用負担、情報管理)などが挙げられます。

Q.時差出勤を導入する場合の留意点を教えてください。

A.時間外労働手当(残業代)や従業員間の公平の問題に注意が必要です。

  • 【時間外労働手当の問題
     労働基準法においては、1日の法定労働時間は8時間以内と定められており、就業規則で始業時刻、終業時刻が定められています。時差出勤とした場合において、残業が生じた場合、どの範囲で時間外手当の支給が必要となるのでしょうか。以下の例を参考に検討していきます。
    【例】
     就業規則で、始業時刻が9時、終業時刻が18時(12時~13時は休憩時間)と定められているが、通勤における感染リスクを鑑み、10時出勤、18時退勤(12~13時は休憩時間)の時差出勤とした。ある日、残業の必要があり、10時出勤、21時退勤(12~13時は休憩時間)となった。
    (法定時間外手当)

     法定労働時間は1日8時間とされていますので、時差出勤が行われている場合も、1日の労働時間が8時間を超えた部分が、時間外労働となり、その時間に対応する時間外労働手当の支給が必要となります。
     そのため、上の例では、8時間を超える部分、19時~21時の2時間分について、法定の時間外労働手当の支給が必要となります。
    (法内残業)
     就業規則において、所定労働時間を超えて勤務した場合に残業手当を支給する旨の条項が設けられていた場合、上の例では、18時~21時が時間外労働となるのでしょうか、それとも19時~21時が時間外労働となるのでしょうか。
     法内残業の取扱いについては、労使間の合意の問題となり、就業規則の解釈の問題となります。今回の就業規則における所定労働時間の解釈としては、1日の労働時間を8時間と定め、それに基づき始業時刻を9時、終業時刻を18時としたものと解釈されるものであり、緊急事態宣言を受けて時差出勤した場合を想定していないものと合理的に解釈できるものといえます。そのため、あくまで1日の労働時間は8時間とする旨の合意があったと解され、時間外労働となるのは19時~21時の2時間と解すべきでしょう。したがって、残業手当の支給は2時間分ということになります。ただし、下記の従業員間の公平という観点からすれば、他の従業員は7時間勤務となっていますので、3時間分の残業手当を支給することが望ましいと考えます。

  • 【従業員間の公平
     
    ある一定の従業員に対して、時差出勤、特に時短勤務を命じている場合、通常勤務の従業員との間に労働時間の差異が生じますので、従業員間で不公平感が生じる可能性があります。そのため、従業員間で待遇の差異が生じないよう、労働時間の調整や、休暇、手当等での配慮を行うことが望ましいと考えます。

Q.新型コロナウイルス感染をおそれて出社しない従業員がいます。どのように対応したらよいでしょうか?

A.従業員に対して出社命令をしても違法ではありませんが、従業員が新型コロナウイルス感染症に感染しないよう、適切な感染防止策を講じた上で、従業員に理解を促すべきと考えます。

  • 【出社命令の可否
     会社は、従業員に対して指揮命令を有しており、合理的な規程に基づく相当な命令である限り、従業員は会社の指揮命令に従う必要があります。そして、従業員がこの指揮命令に反した場合には、懲戒処分などの対象になり得ます。ただし、この指揮命令も、労働契約が予定しているような通常の危険を超え、生命・身体に特別の危険を及ぼすような場合には、当該指揮命令を従業員に強制することはできないと考えられます。
     指揮命令権の限界について、(新型コロナウイルスとは全く状況が違いますが)判断した判例として千代田丸事件(最三小判昭和431224日)があります。この事例は、日韓関係が「異常な緊張状態」にあった中で、会社が従業員に対して海底ケーブルの修理のために朝鮮海峡への出勤を命じたところ、従業員がこれを拒否したため、会社が従業員を解雇したという事案です。この事案において、最高裁は、「労働契約の当事者たる千代田丸乗組員において、その意に反して義務の強制を余儀なくされるものとは断じ難い」として、従業員が会社の指揮命令を拒否したことは違法ではなく、会社が従業員を解雇したことは無効であると判断しました。
     この点、新型コロナウイルス感染症は、適切な感染防止対策をすることにより、その感染リスクを低下させることができるものとも報告されていますし、また、現在(5月20日時点)、岡山県においては、休業要請が出ていない状況にあること等に鑑みると、前記の千代田丸事件ほどの出勤の危険性はないものと考えられます。
     したがって、適切な感染防止対策が取られている職場であれば、従業員に対しての出勤命令は違法ではないと考えます。

  • 【感染防止対策
     
    上記の出勤命令が違法ではないと考えられる前提は、「適切な感染防止対策が採られていること」です。
     この点については、別のQA5月14日の政府、岡山県の発表を受けて、業務を再開させようと思うのですが、注意すべき点はありますか?)で詳細に記載しておりますので、そちらをご確認ください。

Q.新型コロナウイルス感染拡大を受けて従業員全員にマスクの着用を義務付けようと思うのですが、可能でしょうか?

A.指揮命令の一環としてマスク着用を義務付けることは可能ですが、その場合には、マスクの供給は企業の負担で行うべきです。

  • 【マスクを着用するという指揮命令の可否
     企業が従業員に対して、指揮命令権を有していることは、前QAでも述べたとおりです。
     この指揮命令権は、業務に必要かつ相当な範囲内のもののみ許容されると解されています。この点、厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(一般のの方向け)の中で、新型コロナ感染症の予防策として、マスクの着用が挙げられていることからすれば、顧客、あるいは、他の従業員に対する感染拡大防止のため、業務命令としてマスクを着用することは、業務に必要かつ相当な範囲のものと考えられます。 

  • 【マスクの供給は誰がすべきか?
     企業が業務命令としてマスク着用を義務付ける場合、マスクの調達は業務上必要なものとなりますし、安全配慮義務を果たすという意味でも、マスクは企業側で用意すべきです。この場合、企業でマスクを用意する、従業員が個人で購入したマスクを業務で着用する場合には、マスクの費用相当額を企業が補助する等の対応をご検討いただくことも必要になるかと思います。

Q.雇用関係の助成金にはどのようなものがありますか?

A.企業にとって必要不可欠な経営資源は「ヒト」です。人材なくして企業経営の維持を図ることはできません。
 新型コロナウイルス感染症に伴い休業等を余儀なくされる事業主が、雇用の維持・確保し、事業を存続できるように、以下のような助成金の活用を考えることができます。
 なお、雇用関係の助成金の申請手続でご不明な点がございましたら、弊所に併設する吉備総合社会保険労務士事務所までお問合せいただけましたら、可能な限り支援させていただきます。           

  • 【雇用調整助成金の特例措置】
     雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
     先行拡充されていた特例措置に加え、クーリング期間要件の撤廃、被保険者期間要件の撤廃が行われました。また、助成対象となった事業主が感染症拡大防止に資するために行う一部従業員の休業や一斉休業も対象となります。従前に比べ、申請手続も相当簡素化されておりますので、ぜひご検討ください。

  • 【新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金
     新型コロナウイルス感染症に関する対応として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子供の保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規を問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金が創設されました。

  • 【時間外労働等改善助成金(テレワークコース(職場意識改善コース)
     新型コロナウイルスの感染症対策として、テレワークの新規導入や特別休暇の規定整備を行った中小企業事業主を助成するために、要件を簡素化した特例コースが設けられました。
     詳細については不明な部分があるもののかなり使い勝手の良い制度のようですので、ぜひご検討ください。

Q.中小企業が利用できる資金繰り施策にはどのようなものがありますか?

A.中小企業が利用できる代表的な資金繰り支援策は、次のとおりです。
※資金繰り支援内容については、こちらのウェブサイトもご参照ください(https://www.meti.go.jp/covid-/pdf/shikinguri_list.pdf)。           

  • 民間金融機関による信用保証付融資
    ① セーフティネット保証4号・5号
     経営の安定に支障が生じている中小企業を、一般保証(最大2.8億円)とは別枠の補償の対象とする資金繰り支援制度です。
    セーフティネット保証4号は、借入債務の100%を保証するものであり、売上高が前年同月比▲20%以上減少等の場合を対象とします。
    ・また、セーフティネット保証5号は、指定業種738業種につき、借入債務の80%を保証するものであり、売上高が前年同月比▲5%減少等の場合を対象とします。

    危機関連保証
     全国・全業種の事業者を対象に「危機関連保証」(100%保証)として、売上高が前年同月比▲15%以上減少する中小企業・小規模事業者に対して、更なる別枠(2.8億円)を措置したものです。

  • 政府系金融機関による融資
    新型コロナウイルス感染症特別貸付
     最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した場合等につき、信用力や担保によらず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引下げを実施。据置期間は最長5年とされています。

    ② 商工中金等による「危機対応融資」
     最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した場合等につき、信用力や担保によらず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引下げを実施。据置期間は最長5年としています。

    新型コロナウイルス対策マル経融資(拡充)
     最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模事業者について、別枠1000万円の範囲内で当初3年間、通常の貸付金利から▲0.9%引下げする。加えて、据え置き期間を運転資金で3年以内、設備資金で4年以内に延長しています。

    衛生環境激変対策特別貸付
     新型コロナウイルス感染症の発生により、一時的な業績悪化から資金繰りに支障を来している旅館、飲食店営業又は喫茶店営業を営む方であって、最近1か月間の売上高が前年又は前々年の同期に比較して10%以上減少しており、かつ、今後も減少が見込まれる等の場合、1000万円(旅館業は3000万円)の枠内で、原則基準金利1.91%、貸付期間7年間(据置期間2年以内)の貸付を行っています。

  •  

Q.持続化給付金とはどのようなものでしょうか?

A.持続化給付金とは、感染症拡大により、特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を下支えし、再起の糧とするための給付金です。
 広く事業全般に使える給付金であり、法人については200万円、個人事業者は100万円を限度として、昨年1年間からの売上減少分が給付金として支給されます。
 支給対象は、新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上、減少している事業者であり、資本金10億円以上の大企業を除き、中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを広く含みます。また、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人についても、広く対象となります。 かなり使いやすい給付金であり、返済も要らないため、ぜひご活用いただければと存じます。
申請ページはこちらです。

Q.リンク集

A.新型コロナウイルス感染症に関して有益なリンクをご紹介します。